シャープなど関西企業が海外市場の開拓強化に向けた新しい社員研修制度を相次いで導入した。国内市場の頭打ちで、新興国などでの売り上げ拡大は各社にとって重要課題だ。だが、現地の言葉に加え、独自の商習慣などが壁になっていた。そのため、専門の研修制度を導入し、現地で販売拡大に活用できる即戦力人材を育成する。
■中東・アフリカにも派遣
シャープは新興国などに若手社員を1〜2年派遣して言語だけでなく、生活習慣などを学ばせる。2011年度から3年間で20〜30歳代の社員約200人を派遣する。中東やアフリカ、ロシアなどで生活させ専門家を育成。研修終了後は現地勤務とし、拠点立ち上げや販路拡大、現地仕様商品の開発に従事させる。シャープが新興国で生活習慣などを学ぶ研修制度を導入するのは初めて。
国内では営業、企画、研究開発など外国顧客とやりとりをする可能性がある部門に「グローバル職場」を設定した。対象社員数は3000〜4000人程度で、3年以内に英語か中国語で仕事ができるようにするのが目標。5日間連続で泊まり込む研修を半年で4回程度実施する。日常会話を外国語でできる社員数を、関係会社も含め現在の2倍の1万人に増やす。
テレビや白物など家電製品は国内市場の拡大が期待できないため、シャープなど家電メーカーは新興国などの海外市場開拓が急務。販売だけでなく生産や調達、研究開発の現地化も進む。谷口信之・人事本部長は「今後は30歳代前半までに多くの社員が海外勤務を経験する時代になる」と話し、語学など海外への対応力強化を急ぐ。
ダイキン工業は3年ぶりに海外実務研修制度を復活する。派遣先は従来の欧米から、新興国中心に切り替える。20代後半〜30代前半の若手社員を中心に19人を選抜。12年1月から1年間、米国やベルギーのほか、中国やインド、ブラジルなどで実際の業務に加わる。派遣先には同社が今夏、現地のエアコン大手を買収したトルコも含まれる。
日立造船は今年度から新卒を除く入社5年未満の社員を3カ月間、海外拠点で学ばせる実務研修を始めた。一定の英語力などを条件に1年目の今年は25人を選抜し、米英や中国など7カ国・地域の事業所に派遣。現地で営業や調達、経理業務を学んでもらう。今後50人程度まで増やす方針だ。
■中国・ベトナムに学校
一方、パナソニックは3カ月〜2年を目安に海外から幹部候補の人材を受け入れ、日本で経営理念のほか商品企画やマーケティングの手法などを習得させる制度を創設した。帰国後に幹部として活躍できる体制を整えた。また、ベトナムで生産管理や技能を習得する「ものづくり大学校」、中国で製造部門を統括するマネジャーを育成する「製造技術学院」を開設するなど、現地での人材育成も強化している。
ほかにも日東電工が今年から40歳前後を中心とする幹部候補人材を対象に「グローバルビジネスアカデミー」を立ち上げ、シンガポールなどで経営課題についての幹部による講演や討議の場を設定するなどの動きがある。いずれの企業も海外人材の育成は急務と考えており、研修制度などを通じ急拡大する海外市場で人材面での対応を急ぐ。